今夜は「自分軸」「他人軸」のお話。
先にお伝えしておくと、私は「自分軸で生きる」という言葉が少し苦手です。
正確に言うと「自分軸で生きなくてはいけない」と思っている人たちを見ていると胸が苦しく感じるのです。
ちなみにコーチとして関わる中で
「私は他人軸で生きているから辛い。自分軸で生きたい」
と言う人を何人も見てきましたが、その中で「自分軸で生きる」ということの定義を明確に話せる人に出会ったことがありません。
言ったとしても、誰かに聞いたそのままで、自分で考え抜いてもいない浅い言葉ばかりでした。
ただ、「自分軸で生きたい」などと言わずに自然と自分軸で生きている人はもちろんいます。
「自分軸で生きたい!」と言って「他人軸」を否定している人は なぜ選択を「自分」と「他人」に分けてしまうのでしょうか。
自分に素直に生きることが、果たして「自分」を大事にしていると言えるのでしょうか。
私はビジネスコーチとしてたくさんのビジネスパーソンと関わってきましたが、様々な人に囲まれている優秀なビジネスマンが、自分の欲や心の声に素直に生きていくことが本当に幸せなのか?と考えると疑問が残ります。
かつて「自分軸で生きる」という考え方に感銘を受けた高収入の女性が会社を辞めて、しばらくしてとても後悔していたことを思い出します。
「自分軸」と「他人軸」はグラデーションです。
ビジネスではあなた自身が心から「したい」と思えることばかりが目の前に現れてくることはありません。
「しなければならないこと」もたくさんあるはずですし、チームや取引先の中には関わりたくない、気が合わない。そんな人もいるでしょう。
業務の1つ1つをみていくと、もしかしたらあなたにとって「したい仕事」ではないかもしれない。
これを一生続けていくのは辛いと思うかもしれない。 でも立ち止まってこの仕事をした先にたくさんのことが得られていることも事実ではないでしょうか。
ビジネスで目標を達成するために、ほとんどの人は「誰か」と関わる必要があります。
「騙したり」「脅したり」してお金を奪おうと思っていない限り、ビジネスでの目標達成とは「誰か」への貢献を示すでしょうし、ほとんどの場合それを1人で成し遂げたとは言えず、誰かの存在があったでしょう。
その「目標」であったり、その目標を達成する「目的」のために必要なことは「自分軸」「他人軸」ではなく、このグラデーションをいかに使いこなせるかであると思っています。
そもそも「自分軸」を知る為には自分を知らなくては語れませんし、「他人軸」を知る為にはより自分を深く知らなければいけません。
大抵そこが甘いと「他人軸」だと思っていることこそが、その人が本当に大切にしている「やりたいこと」だったというケースも少なくありません。
それを勝手に脳内ですり替えて「自己犠牲」と捉えてしまう思考パターンが生きづらさの原因を作っている場合も多いのです。
「やりたくないのに、やっている」ことのほとんどが「やりたい」こと。
その理由は様々ですが、自分を守るために選択していたり、大切な誰かを守るためにしているのです。
数年前、尊敬するコーチから 「自分で自分を好きになる選択をし続けることで自己肯定感が高くなる」 と聞いた時、腑に落ちました。
自分が今やりたいことを選択し続けるのではなく、自分で自分を好きになる選択をし続けるのです。
ここの差はとても大きい。
母として、今やりたいことは、疲れをとる為に子どもをおいて思い切り寝ることかもしれないけど、そうすることで母としての自分を好きになれるのか?というと私はそうではなかった。
それより、仕事でクタクタでもたった5分だけでもスキンシップを取りながら絵本を読んだ後、布団に横になった夜の方が自分を好きになれました。
仕事でも「この仕事で忙しいので手伝えない」とチームメンバーに言った夜より、誰かのミスを、自分の仕事そっちのけで残業してサポートしている自分の方が好きになれました。
今まではずっと「母」の自分は自己犠牲の塊だと思っていたし、会社員時代も自分ばかり損していると思っていたけど、 よく思い返せば、私は好きになれる選択をしてきたのかもしれないと気づいた時、私にとって「やりたい」「やりたくない」は大切な基準ではなくなりました。
「やりたくない」ことや、誰かに認められたい、気に入られたい、嫌われたくないと思ってやっていたことも、捉え方次第で「自分軸」にいくらでも切り替えられるのです。
そう、「自分軸」「他人軸」は表裏一体。捉え方だけの話。
その境界線は実は恐ろしく曖昧で、幻想なのかもしれないなと感じました。
短絡的な感情で「自分軸」「他人軸」分けるものではなく、捉え方を変えていくことで自分を責めることや犠牲にすることも減らすことができるかもしれません。
幸福度の高い人は、現状の捉え方がうまい人でもあります。
それは何も無理してポジティブにしている人という訳ではありません。
自分を心底知る努力をした人です。
それは別に自分の棚卸しををして自分年表を作れば知れるかというとそんな話ではないのです。
自分を深く知っている人は、自分から広がるたくさんの人や環境に対して、敬意を持てる視点が豊富です。
その視点を増やす学問こそが「コーチング」であるとも説明できるのではないでしょうか。
私はコーチングを広める中で、「自分軸」「他人軸」という言葉が減れば嬉しいなと思っています。
ここを線引きすることで見落としてしまう「笑顔」や「人間関係」そして「成長の芽」がたくさんあるように感じているのです。
自分を深く知り自己認識を高めた大人たちがいる世界には、むやみに自己犠牲を感じる人も、自己中心的に誰かを傷つける人も減った優しい世の中に近づいていると信じています。
だからこそ私はコーチングを広げなければいけない。
そしてその思考パターンが子どもたちに伝染していくことを止めなければいけない。そう思っています。
コーチングをよりたくさんの人に届けていくことは 「やりたいこと」というより「当然のようにやるしかないこと」と感じています。
きっとそれを成し遂げる為に選択したこと全ては、自分をもっと好きになり、大切な人たちにもっと感謝できる未来に繋がることが私には見えるから。
トラストコーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ
マザーズコーチングスクール認定シニアマザーズティーチャー
西田みゆき
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