こんにちは。
TCS認定プロフェッショナルコーチの西田みゆきです。
最近はコーチングも日本で随分市民権を得たのか、少なくはなってきたのですが、コーチという仕事をしていると、怪しい目を向けられたり、否定されたことは過去に何度もありました。
でもそういったコーチングを批判的に捉えている人にも様々な背景があるので、そのことで心が乱されることはないのですが、唯一胸が締め付けられた経験があります。
まだ私がコーチになって1年目の頃、とあるセミナーに参加し、その後の懇親会にも顔を出しました。
名刺を交換して、コーチングのことを質問されたりしたので、喜んで答えていた時に、1人の20代半ばくらいの男性が少し離れたところから私を睨んでいるような視線を飛ばしてきます。
それに気づかないふりをしていましたが、私と話をしていた人が移動したタイミングで声をかけられました。
男性「あの・・・コーチングしてるんですか?」
私「はい。コーチとして活動しています。」
男性「コーチングって答えは自分の中にあるから、人に聞かずに自分で考えろってやつですよね」
私「・・・。確かにコーチはクライアントの中の答えを一緒に探すお手伝いをしますが、人に聞かずに自分で考えろというような投げやりな姿勢ではありません。何かコーチングで嫌な経験でもされたことがあるのでしょうか?」
男性「コーチングに人生壊されたんですよ。上司がコーチングを崇拝してて、新入社員時代何も教えてくれなかったんです。何をやっても自分で考えなさい。それが一番成長する。って言って。ダメと言われても何がダメかも教えてくれなくて、自分で考えろ。の繰り返し。どうしていいか分からず、自分は何も出来ない人間だとどんどん落ち込んで、心が潰されたんです。だから僕はコーチングが大嫌いです。」
まだ経験も少ない1年目のコーチだった私は、自分がやっているコーチという仕事の世間的な実態を何も見えていなかったことに気づかされました。
本来コーチングを学ぶのは、自分や大切な人の夢や成長を応援する為。と私は思っていたけれど、間違った形でコーチングがリーダーに伝わると、若い可能性を潰してしまうことにもなるのだと怖くなりました。
しかも、きっとそのリーダーは「良かれ」と思ってやっている。
それがとてつもなく厄介な訳で。
コーチングは様々なシーンで使えるコミュニケーションスキルではあるものの、「コーチング」だけが万能な訳ではもちろんありません。
例えば社会人1年生のその男性のような方は、会社員としてまだ経験がないので「自分の中に答えがない」状態だったのかもしれません。
知識や経験によって、潜在的にも選択肢があるから選べる訳で、その選択肢を持ち合わせていない時に、誰かに相談したり教えてもらうことを排除して、「自分で考えろ」の一点張りだなんて、もはや拷問です。コーチングでもなんでもない。
そのリーダーがどのようにコーチングを学び、その教育方針に決めたかは知りませんが、このような悲劇が実際起こっていることをコーチとして、しっかりと胸に刻んで伝えていかなければいけない。と思えたとても貴重な経験でした。
そもそもコーチングを学んだコミュニケーションは温かいもの。
時に相手の成長の為に、耳の痛いフィードバックをすることもありますが、その効果を発揮するのは、自分と相手の関係性がしっかりと築けているという前提の上でしか成り立ちません。
相手が「応援されている」と自然と感じとれている状態でなければ、コーチングの効果は半減どころかマイナスになることもあります。
相手の自分の距離や信頼関係を見直し、今相手が最も成長できるのは「ティーチング」か「コーチング」かを見極めることがとても大切。
その上で「ティーチング」をより効果的にする為に「コーチング」のスキルが活かされていきます。
トラストコーチングスクールを学んだリーダーの皆さんからは
「部下の成長度合いと共にティーチングとコーチングの割合を徐々にコーチングに寄せていくことで、主体的なメンバーがとても増えた」
「ティーチングかコーチングかという考えだったけど、ティーチングの質を高めるのがコーチングであると実感し、より必要性を感じた」
などのご感想をいただいております。
あの若い男性との出会いは私を初心に戻してくれるエピソードです。
こんな思いをする若手社員の方を1人でも減らしたい。
コーチングが温かく成長を促すコミュニケーションとしてリーダーの皆さんに届くように、私ももっとコーチングを発信していかなくては。
あの日名刺を交換してくれなかった彼にも、届くくらいに。
トラストコーチングスクール(TCS)認定プロフェッショナルコーチ
西田みゆき
部下を持ったらコーチングを学ぶ時代。